メモワールイナバの社長さんに突撃!


皆さんは葬儀にどんなイメージを持っていますか?
また、葬儀場の職員さんがどのように働いているか考えたことはありますか?

今回は、鳥取の葬儀業界でトップシェアを誇る「株式会社メモワールイナバ」の代表取締役社長である光浪房夫さんに、知られざる葬儀業界について、学生記者の小倉と村上がお話を伺いました。


小倉 取材をさせて頂くにあたって、事前に葬儀業界の働き方について調べたところ、情報が多くイマイチ把握しきれませんでした。また、他の記者クラブメンバーと話し合った時に「働くイメージがわかない」といった意見がありました。どのような雰囲気の中で仕事をされているのか、説明していただけませんか。

社長 葬儀業界自体が暗いというイメージをもたれていますね。でも、暗い方にはできない仕事です。というのも、感情移入をしすぎてしまいますと、気持ちが落ち込んでしまうからです。根が明るく、冗談を言えるような方でないと活躍できません。

小倉 そうなんですね!なんだか意外です。

社長 スタッフが明るくないと、お客さんが暗くなってしまい、葬祭会館に行くのが嫌になってしまいますから。明るい雰囲気で取り組んでいます。

小倉 社長がこの業界に入られるきっかけは何だったんですか?

社長:創業者である義理の父の手伝いをしたことがきっかけです。とても崇高な仕事だと思いました。一方で、業界全体として、まだまだ十分に利用者様のご要望にお応え出来ていない現状があり、「これは自分がやらなくては」と思い様々な取り組みを始めました。葬式に司会を置いたり、スピーカーを設置することを初めておこなったんですね。

そうするうちに、仕事もどんどん増えていき、後進企業ですが、シェアを伸ばすことができました。10年余りで県内第1位を取り、第2位の2倍近い件数を記録しました。「鳥取県は人口が少ないのに、そんなに多くの件数を取り扱うのですか」と外部の業者さんが驚かれます。

小倉 新しい取り組みを多く行われてきたのですね!生花事業もやっておられますよね?

社長 はい。葬儀に特化させるために、うちで部門をつくりました。
他にも、その方だけの思い出ビデオを作り、スライドで流すことも始めました。とても好評をいただいていまして、このサービスのためにご利用される方もいらっしゃいます。また、故人が魚釣りが好きな方でしたら、青で表現した祭壇のデザインを施したりします。自分達で工夫し、故人に合った葬儀を実施できることが特徴です。

小倉 多くの事業を扱っていらっしゃいますね。他部門の事業を多く取り入れるのはなぜですか。

社長 やはり他の人に任せると魂が入らないからです。マイクロバスを外注した時なのですが、そこの運転手さんがタバコを吸いながら運転して、参列者様へ不快な思いをさせてしまったことがありました。ですので、バスの手配も自分たちで行えるように部門を作ったのです。礼儀作法を指導し、乗り降りの際に手を添えるなど気配りを意識しています。

その他にも色々な事業部を持っています。仏壇の販売や遺品整理など新しく始めたことは多いですね。

小倉 なるほど。やはりお客様の声を元に様々な取り組みを考えられているということでしょうか?

社長 そうですね、それも大事ですが、「何よりも自分がしてほしいことをする」ということを会社全体として心がけています。例えば、うちの葬式はインターネット経由で生中継できるようになっています。入院や寝たきりで直接参列できないという方も多くいらっしゃる中、これなら遠隔ではありますが、ご参列いただけます。自分のしてほしいことを、社員それぞれがしている。これがわが社の強みだと思います。

小倉 葬式場の中継は本来タブーのように感じますが…。

社長 それをやっていいのか、という葛藤ももちろんあります。しかし、「もし自分が入院していたら…」と考えたとき、会場に来ることができない方のために中継をしようと決めました。

村上 社員が自分で考えて動ける理由は何だと思いますか。

社長 初めからそういう雰囲気を作っているからです。初めは担当者が業務の内容について教えます。私が指示するようなことはほとんどありません。現場に出て仕事をしていれば、最初はほかの人のまねから始まり、じゃあ自分があれしてみよう、これしてみようと考えるようになりますから。

小倉 メモワールイナバさんの事業の中にカレーとコーヒーのギフト事業がありました。この事業はどういった経緯で始めたのですか。

社長 青谷にあったギフト屋さんを、店主がご高齢ということもあり、受け継いで管理しています。常連さんも多く、憩いの場所をなくさないように、という思いでボランティアの気持ちで行っています。

小倉 私は獣医学部で動物の遺体を取り扱うことがあるのですが、ずっと関わっていると遺体に慣れてしまいます。社員の皆さんにも「慣れ」はあるのでしょうか?

社長 そうですね、遺体に慣れますね。確かに最初は怖いですが、現場にいけば自分がやらなくてはいけません。そこでは、怖さよりもプロ意識が上回り、うまく立ち回れるのだと思います。

村上 沢山の部門があり、行なっていることは別々でも、一つのところで繋がっているような気がします。

社長 そうですね、理念が一緒であるということですね。この仕事柄、どうすれば人のためになるかが大前提です。それを考えていくと、何をやればいいか自ずとわかるようになると思います。

時代の変化に伴い、お葬式の形が変わりつつある今、「人を送る」という儀式を通じて鳥取を支えてきたメモワールイナバさん。その赤字覚悟のとことんやる姿勢に、感動以上に驚きを感じました。

その挑戦の源は「自分がしてほしいことをする」という光浪社長の思いでした。

亡くなられた方の過去とその周りの人々の未来を想うからこそ、限りなく挑戦し続けられる。いつか誰もが経験し、けれども私たちが全く知らない場所に、その真心はありました。