倉吉から世界へ。若き社長が挑むものづくりの世界。 ー 株式会社西田製作所 西田尊義さん


みなさんは、地方や地元に、どんなイメージを持っていますか?

『閉じた世界で生きることになるんじゃないか』
『都市と比べると、情報や技術が遅れた仕事しかできないんじゃないか』

そんな思い込みを吹き飛ばすように、鳥取県倉吉市から世界とつながる仕事をするのが、今回伺った西田製作所。
今回は3代目社長の西田尊義さんに、地元に戻った動機、ものづくりの面白さ、働く環境について、お話を伺いました。


 

地元・倉吉から、世界を支えるものづくりを

ーー会社ではどのような事業をされているんですか?

「主な事業は、金属の切削加工です。自動車、ロボット、農機用具、あらゆる工業製品は、無数の部品が組み合わって完成するんですが、私たちがつくる0.00…単位の精度が要求される加工部品は、国内はもとより、海外へも輸出され使われています。」

「『倉吉から日本、倉吉から世界を支えるものづくりをしたい』と思っています。世界と繋がる仕事って、東京や大阪など都市圏に行かないとできないんじゃないか、って自分すら思い込んでいました。でも意外と、地元でできちゃうんですよ。」

「企業説明会で、地元の高校生にそう話すと『え、倉吉の会社でも世界とつながっているんですか?』って驚いてくれて。手元のパンフレットが無くなるくらい、話しを聞きに来てくれたのは嬉しかったですね。」

「会社やものづくりの魅力というより、未経験である自分が純粋に驚いたこと、感じたことを話してるんです。親しみやすいというか、話しやすい雰囲気を感じてくれたんだと思います」

 

「都会」と「世界」

ーー以前から、家業を継ぐことは考えていたんですか?

いずれは帰るんだろうな、という漠然とした思いはありました。だから大学進学の際も、経営学部がある東京の大学へ行くことを決めました。

東京で印象的なことがあって。鳥取にいた頃は、大阪に行きたい、東京に行きたいって都会ばかりを見てたんですよ。でも、東京の仲間は世界を見てたんですよね。『俺は◎◎に留学したい』『◎◎の国で仕事をしたい』って。『ああ、自分は都会しか見ていなかったな』と。視野の広さが全く違うことに、すごくショックを受けました。

新卒では、不動産業界で大手のグループ会社に就職しました。大学卒業後、すぐ鳥取に戻るか、東京に残るか、両方の思いがあったんですが、迷った結果、東京に残る選択をしました。

分譲マンションを管理する仕事でした。購入後の設備メンテナンスの提案をはじめ、住民同士のトラブルの間に立ったり、マンション内のコミュニティをつくるためにゴルフコンペやパーティを企画したり…多岐にわたる仕事をやっていました。

 

ーー印象に残っている出来事はありますか?

二つあります。一つはお客さんとの関係に関してです。ある時、住民の方との関係性が不十分なマンションの担当になったんですね。顔を合わせるだけで怒られたりするような関係からはじまって。とにかく自分の武器はフットワークだと思っていたので、電話やメールで済ませずに、呼ばれたらすぐ行くことを心がけていました。顔を見て相手の話を聞くことを根気よく続けました。

それから2〜3年経ち、自分が会社を辞めるとき、マンションの住民さんたちが送別会を企画してくれたんです。はじめの関係が嘘のように、辞めることを惜しんでくれたのは嬉しかったですし『自分のやってきたことは間違いじゃなかったんだな』と思えました。

もう一つ印象に残っているのは、社内の先輩や後輩のことですね。普段から『どうやったらいい仕事が出来るか』『お客さんのためになるか』『会社や社会に貢献できるか』について話ができる環境だったので、とても刺激を得られる毎日でした。

「見て覚えろ、音を聞け」

ーーそれから地元に戻り、家業を継ぐきっかけは何だったんですか?

営業なので当然、目標数字があるんですが、毎年クリアしていました。それでだんだん自分の中で『もっと仕事で勝負したい』という想いが芽生えてきたんです。入社4年目くらいのときですね。『実家にはチャレンジ出来る環境がある』『じゃあ地元に帰ろう』と。その意志が次第に固まっていきました。

今でも現場で動いていますが、実家に戻った当初も色々勉強したり、チャレンジしました。当社は量産加工(1日に同一種類をたくさん造る)がメインなんですが、自分が帰ってきてはじめたのが単品加工(1日に複数種類を少量造る)です。毎日造るものが違うので、どの工具を使えばいいか、どんな技術で応えるか、考えないといけないんです。トライアンドエラーで、勉強と経験を重ねながら、一つ一つ課題をクリアしていきました。

学生時代からサッカーをしているんですが、練習や試合で、何ができて何ができなかったかを分析するようにしてきました。失敗経験を振り返って学ぶことで、いいプレーができるようになっていくんです。仕事も同じで、なぜ失敗したか原因と対策を考え、ひたすらトライアンドエラーを繰り返すことが大切だと思っています。

製造に必要な図面などの説明をしてくださっている西田さん

ーー前職とは畑違いの仕事だと思いますが、難しさを感じることはありましたか?

製造業で難しさを感じたのは、例えば『これってどうするんですか?』と質問したら『見て覚えろ、音を聞け』『“ファー”じゃなくて”スーッ”だ!』と言われたりするわけですよ。もう『ザ・職人』って世界ですよね。

音の違いが何かというと、金属を削る時に突き出す刃物の長さなんです。じゃあ何ミリが最適なのか。50ミリなのか、55ミリなのか、数値にしてマニュアルに落とし込んでいきます。もちろん、音や触ったときの手触りに頼る部分はありますが、この感覚をどれだけ見えるように出来るかが、自分の仕事におけるテーマの一つだと思っています」

形になる面白さ

ーー入社してから何年後に社長になられたんですか?

2年後の29歳のときですね。自分が会社のトップになるわけですけど、社員よりも自分が若かったり、社歴も経験も浅いわけじゃないですか。そんな自分がトップになる逆転現象が起きることで『俺は先代にしかついていかない!』なんて、ドラマみたいなことがあるのかもと想像していたんです。不安を抱えていたんですが、実際はそんなことは全く無かったですね。

社長就任のお祝いに、サプライズで社員一同から壁掛け時計をプレゼントしてもらったんです。なんだか、みんなが歓迎してくれたというか『頑張れよ』と言ってもらえたような気がして。嬉しさもありましたけど『頑張らなきゃいけないな』と、経営者としての自覚を再確認する出来事でした」

ーーマンション管理の世界から未経験の製造業へ。どんなところに仕事の面白さを感じますか?

「今まではサービス業だったので、商品に形が無いんですよ。今は、図面が書かれている紙を見ながらモノをつくって、二次元が三次元になっていく。目に見え、触れられる形になっていくのが面白いですね。それと、社員の成長を感じる場面に出くわしたときですね。それがもう、ただただ純粋に嬉しいです。」

現在、新入社員の仕事やメンタルのフォローのために、研修日記の仕組みを導入しています。先輩社員と仕事に関する交換日記をするイメージですね。ある社員が新入社員に向けて初日に書いたコメントに『社会人になると責任が伴います。責任を持って仕事を進められるように、一緒に頑張っていきましょう』って書いてあったんです。目線が上がったというか、仕事に責任を持って取り組もうとしている姿を感じられて、嬉しかったですね。

 

「知らない」は武器

ーー会社で、どんな人を育てていきたいですか?

そうですね。困ったことや分からないことに直面した時『どうしたら解決できるかな?』を考え、周りに教えてもらいながら自分でやろうとする人を育てていきたい、と思っています。

新しく会社に入った人は『知らない』立場を存分に活かしてもらいたいですね。自分もそうだったように、はじめは知らなくて当たり前なので、恥ずかしいことじゃない。知らないことを武器に、どんどんチャレンジしてほしいですね。

産休明けの女性社員もいるのですが、弊社では女性の力をとても大事に考えています。ものづくりの現場では、まだまだ女性は多くないんですが、有給も半日単位で取れるように就業規則を改訂したり、働きやすい環境づくりを進めているところです。建物の改修も進めていて、トイレもそのひとつです。床や壁紙の色も全部女性陣に任せて、やってもらいました。

そうやって一緒に、働きやすい環境をつくっていきたいですね。

働いてよかったと思える会社に

ーー最後に、今後の取り組みや未来について聞かせていただけますか?

現状維持は衰退だと考えているので『成長を止めたくない』『継続して発展していきたい』と思っています。今より生産性や品質を高めて、よりよい生活をできる会社にしていきたいんです。

それと、社員全員が『仕事人』であってほしいな、という想いがあります。会社に尽くせという意味ではないです。『どうやったらよりよく出来るか』と常に考える。自分や会社、お客様とも一緒に学び、成長する。成長することで仕事で成果を出し、会社からも評価される。お互いに学び高め合うことで、社員も会社も成長する、いい循環が生まれると思うんです。

せっかくうちで働いてくれるんだったら『この会社で働いててよかったな』って、そう思えるような会社にしたいですね。

製造現場を見て回る西田さんとインタビュアー


 

倉吉からものづくりで世界を支える西田製作所。
会社の根底には、どんなときでも挑戦を続ける、西田さんの情熱がありました。

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